重厚な原作本を1本の劇場作品にまとめあげた藤咲監督。
京極作品の独特の世界観にSCANDALの若いパワーを組み入れたことで、作品の向かうべき方向が決まったという。
まずは劇場版『ルー=ガルー』の注目ポイントなどをうかがった。
京極作品の独特の世界観にSCANDALの若いパワーを組み入れたことで、作品の向かうべき方向が決まったという。
まずは劇場版『ルー=ガルー』の注目ポイントなどをうかがった。
SCANDALとのコラボが方向性を決めた
── SCANDALが作品に与えた影響といいますと?
最初は現代と未来をつなぐ線として、伝説のバンドと設定したSCANDALさんの名前や曲を使わせていただこうとか、
BGMも全部SCANDALさんの楽曲で行こうとか考えていました。
それが実際に彼女たちと話してみて、思いっきり生きている若さを感じたんですね。
その感覚を作品に活かせないかと思い4人の女の子たちを立てる方向へ進めることにしました。
ですから、SCANDALさんとのコラボがなければ、
もっと事件を追いかけていくミステリー風の作品構成になっていたかもしれませんね。
── その方向性というのは具体的にはどういうものなのでしょうか?
SCANDALさんの「今を元気に生きよう」、やりたいことを思いっきりやろうとしている姿が新鮮だったんですよね。アニメ制作の現場の人たちというのは頑張っていても、どうしてもそれが内向きなところがある。
ところがSCANDALさんは外に向かって発信している。
それも持てるものをすべて使って表現しようとしている。そこをうまく取り入れたい。
映画の中でも自分の意思を表現するんだという部分を出そうと心がけました。
── それはいつ頃の話だったのでしょうか?
ナビディスクに入っている導入編と呼ばれるものを作っていたときですね。そこで使うためSCANDALさんに「KOSHI-TANTAN」のモーションキャプチャーを収録していただく前、
ライブに行ったり練習を見学したりして、実際に彼女たちと話したりしてみて驚いたわけです。
そこで導入編が上がってすぐかな? 頭からやり直したくなって、路線を少し変えてみました。
原作から自由に、でも本質を受けついで
── 原作とのすりあわせのような部分はいかがでしたか?
大まかなストーリー自体は変えるつもりはなかったんです。ただ『ルー=ガルー』の独自の設定という部分を映像でどう見せるかという点に囚われすぎると、
そこの説明で終わってしまって、肝心の部分が抜けていっちゃう。
悩んだ結果、いつの時代でも変わらない部分というのを描いていこうという風に思い至りました。
── 京極先生の方からオーダーとかダメ出しとかはございましたか?
お任せに近い感じでした。原作とキャラクターのあつかいを変えても許していただきました。ただ、自由にやってくださいと言われた分、
結局は自問しながら自分の描きたいものを描くしかないんですが、そこが難しかったですね。
それで物語中の「管理社会」という言葉とそれを表す「モニタ」。
あと食事が「合成品」で、生命の死がリアルに感じられないというところを押さえていければと思いました。
だから原作では出てくる猫も出さなかった。劇中に動物を出しちゃうと意味深くなりすぎますので。
── メインの4人の女の子の設定も変えておられますよね?
そうですね。原作の場合、冒頭のシーンで葉月がいて美緒がいて、歩未がいて自然に始まるという図式。それを僕なりに解釈すると、オリの中に入れられた子犬みたいな感じになってるんだろうとは思いました。
でも映画だとそこで説明がないとわかりづらいと思えたので、
歩未は転校生にして、美緒も今日から一緒のグループになったという、簡単な自己紹介を付けたんです。
それで、ひとりだった葉月に仲間が増えていくというわかりやすさを出したんです。
あと麗猫は説明すると長くなっちゃうので、美緒の関係は幼なじみで昔から知り合いだということがわかるぐらいにとどめています。
── 監督の目から見て4人の女の子はどんな子たちだと考えられましたか?
意外と全員が生きるのが下手なんです。美緒も積極的にコミュニケーションを取っているようで、実際は押しつけているだけかもしれない。
だいたい最初の方では、みんな会話を含めて空回りしているだけ。そのギクシャク感が出せればと思いました。
── そんな彼女たちががだんだんつながっていく?
そうです。「KOSHI-TANTAN」が流れるところで、4人がまとまるという構造にしているつもりです。ですからそこを過ぎてからは、みんな下の名前で呼びあうなど親しげな感覚で描いています。
声と絵の仕上がりに注目してほしい
── 少女たちのキャスティングについてはいかがでしたか?
キャスティングは葉月と歩未を決めるところがキモでした。このふたりがメインとなりますので、それぞれのキャラクターでオーディションをしました。
葉月役の沖 佳苗さんは、以前『RD潜脳捜査室』という番組でご一緒していて実力をよく知っていたので、すぐ決まりました。
彼女、性格は明るんですが、なぜか時々暗い顔をすることがあって。
本人は否定してますが、そういうところが出せれば面白いかなと思って起用しました。
おかげさまで不安な感じやか弱さがよく出ていましたね。
歩未役は最後まで決まらなかったんです。
五十嵐裕美さんは、ご自身の性格なのかもしれませんがボーイッシュな女の子の演技をしたとき、
様子をうかがいながらしゃべっているようなニュアンスが感じられてそこが決め手になりました。
美緒役の井上麻里奈さんや麗猫役の沢城みゆきさんについては、
経験も豊富な方々なので、もうお任せしますという感じでした。
── ほかにこれからご覧になる方に注目して欲しいところなどございますでしょうか?
一見、シンプルに見える絵なんですが、デジタル撮影のときにいろいろと効果を入れ込んであります。例えば、壁紙プレゼントでも使っている月をバックにした歩未のアップ。
これは歩未の輪郭を彩る燐光を何回も微調整しながら重ねています。
そんな画面の仕上がりをスクリーンで確かめてもらえるとうれしいですね。
<後編につづく>


